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10分でわかる『ファクトフルネス』とは?【本要約・レビュー】

投稿日:2020年2月11日 更新日:

タイトル画像「10分でわかるファクトフルネス」

今回の記事では、2019年に50万部以上を売上げ、ベストセラーとなった書籍『ファクトフルネス』を紹介します。

人は10の思い込み(本能)によって世界を正しく見られていない。著者のハンス・ロスリング氏は、社会全体に勘違いが広がっていると警鐘を鳴らしています。

そこで、突然ですが「クイズ」です。

思い込みを知るためのクイズ

世界の1歳児の中で、なんらかの病気に対して予防接種を受けている子供はどのくらいいるでしょうか?

A) 20%、B) 50%、C) 80%

 

正解は C) 80% です。この問題は書籍の中で出題されているものですが、何と日本人の正答率は6%しかありませんでした。なぜ、こんなに正解者が少ないのでしょうか?

それはテレビや新聞のニュースによって10の思い込みのひとつ「ネガティブ本能」を刺激され「世界はどんどん悪くなっている」と思ってしまっているからです。

書籍『ファクトフルネス』を読むことで、

・世界を見る目が変わって気分が軽くなる
・世界を理解するのにニュースは役立たない
・ありのままの世界を知ることで、本当に必要なことがわかる

と、まさに「新しい時代の情報リテラシー」を身につけることができました。

ファクトチェックをするイラスト

著者のハンス・ロスリング(1948~2017年)氏は、スウェーデン出身の医師であり、TEDトーク(※)の人気スピーカーでもありました。この書籍を最後に残念ながら病気で亡くなっています。

※TEDトーク(テドトーク:Technology Entertainment Design Talks)TED(カンファレンス)によって主催される、さまざまな分野のエキスパートよる世界的講演。動画配信サービスを介して、いつでも誰でも無料で視聴することができる。

ハンス氏は、世界保健機関、ユニセフ、いくつかの国際援助機関のアドバイザーを務め、スウェーデンにおける「国境なき医師団」を立ち上げました。本書の論拠は、データや数値による客観性の高いものですが、同時に、長年医師として世界中の人々と関わってきた経験にも裏付けされています。

今回は10の思い込みの中から、私が特に大事だと感じた3つをピックアップし要点をまとめました。また、記事の後半では改めて「10の思い込み(本能)」を全て列記しています。

世界の本当の姿を知って、気分を楽に、賢く生きる、皆さんのファクトフルネスな生活に、ぜひご活用ください。

1.書籍『ファクトフルネス』の10の思い込みから、特に大事な3つをピックアップ

恐竜のおもちゃの写真

ファクトフルネスで紹介される10の思い込みは、全て人類が進化の過程で身につけた生きるための本能に関わっています。直感と言い換えることもできます。

目の前にいる猛獣から身を守るために「恐怖を感じる本能」は必要なものでした。ですが、果たして悲惨な飛行機事故のニュースを見て「もう、飛行機に乗るのはやめよう」と決めることは理に適っているのでしょうか?

人類は地球上の他の動物には見られないめざましい進化と、この1,000~2,000年程で高度な社会文化を形成しました。複雑・高度化した社会では、原始的な本能が正しい判断に役立つとは限りません

次項からは、書籍で紹介されている思い込み(本能)の中で、特に大事だと感じた3つ「直線本能」「過大視本能」「焦り本能」について要点を簡潔に解説していきます。

進化のイラスト

1) 直線本能

世界の人口は将来どうなると思われているでしょうか?

著者ハンス氏は、次のグラフを書籍の中で紹介しています。爆発的に増える世界人口の推移を表したグラフです。

世界人口のグラフ画像

出典:Gapminder[17],Biraben,McEvedy and Jones,Maddison[2],UN-Pop[1]

このグラフを見ると、今後2100年までの間に点線のように人口が増え続けると予想してしまわないでしょうか? これが直線本能です

直線本能は、近い将来を予測するのに役立ちます。今、まさに暴走車がこちらに迫っているとき、どこに逃げればいいのか。人は本能で避けることができます。

ですが、人口推移のように長期間で物事を考えなければいけないとき、この「直線本能」は役に立たないどころか、間違った認識へ誘導してしまいます。

 

世界人口の予測グラフ画像

出典:Gapminder[17,39],UN-Pop[1],Maddison[2],リヴィ-バッチ(2014),Paine and Boldsen,Gurven and Kaplan

国連の予想では、次第に人口の増加率は鈍化し、やがて横ばいになるだろうとされています。グラフを見るとわかるように、1800年頃までは緩やかな傾斜でした。2100年以降も、そのような緩やかな傾斜になるだろうと言うのです。

著者ハンス氏は、1800年以前も2100年以降も人は自然と調和のとれた状態だと言います。ただ、1800年以前は「自然と調和しながら死んでいった」が、2100年以降は「自然と調和して生きられる」ようになるのだと。これは世界の所得レベルの向上や、女性ひとりあたりの子供の数の低下が関わっています。

食糧難やエネルギーの枯渇など、人口増加に伴う課題は多くありますが、「人口はただひたすら増え続けるわけではない」と知れば、ずいぶん気持ちが楽になりますし、対策も変わってきます。

人口増加に苦しむイラスト

「直線本能」を抑えるためには

長期的な動き(推移)では、直線にならない事の方が多いと心にとめておきたいですね。グラフを見かけたら、次の4つの一部ではないかと思うことが、ファクトフルネスのポイントです。

  • S字カーブ
    急増しやがて緩やかになるもの。世界人口や「所得レベルと識字率」など
S字グラフ例(所得レベルと識字率)

出典:Gapminder[3,21],UNESCO[2]

  • すべり台
    急落しやがて緩やかになるもの。「所得レベルと女性ひとりあたりの子供の数」など
すべり台グラフ例(所得レベルと女性ひとりあたりの子供の数)

出典:Gapminder[3,4,7],GD[1],USAID-DHS[1],UNICEF-MICS,OurWorldInData 大幅に簡略化

  • コブの形
    ある範囲だけで急増するもの。「所得レベルと交通事故」など
コブグラフ例(所得レベルと交通事故)

出典:Gapminder[3,48],IHME[3]

  • 倍増していくもの
    所得レベルと二酸化炭素の排出量など
倍増グラフ例(所得レベルと二酸化炭素排出量)

出典:Gapminder[51],CDIAC,UN-Pop[1]

※上掲の4つのグラフの横軸に使用されている「所得レベル」とは、1人が1日あたりに稼ぐ平均所得金額に応じた以下の分類です。LV1(~2ドル/日)、LV2(2~8ドル/日)、LV3(8~32ドル/日)、LV4(32ドル/日以上)

※上掲の4つのグラフは、グラフの種類を見るための参考程度にご覧ください。より正確な数値は出典元をご確認ください

環境問題のイラスト

2) 過大視本能

1年間で420万人の赤ちゃんが亡くなった。

※1才未満で亡くなった世界の乳幼児数

これはユニセフの調査でわかった数値です。そんなに多くの赤ちゃんが、成長を待たずに亡くなっていることに驚きますし、悲しい現実です。助かる命があるのならば、この数字を少しでも減らしたい。心の底からそう思います。

赤ちゃんを待ち望む人のイラスト

ところで、この「420万人」という数字は2016年の調査です。その前年はどうだったかと言うと「440万人」でした。さらに前年は「450万人」、1950年では何と「1,440万人」の赤ちゃんが亡くなっています。2016年までの66年間で赤ちゃんの死亡数は1/3以下になっています。それは、とても喜ばしいことですね。

もちろん現状に甘んじていいわけではありません。ですが、人々の努力によって世界は少しずつ良くなっている。今目の前の悪い出来事と、努力してきた成果は、区別して把握しなければいけません。

このように目の前の数字だけを見て「なんて大きいのだろう」とか、逆に「なんて小さいのだろう」と勘違いすることを「過大視本能」と書籍では紹介しています。特に、メディアは過大視本能につけこむのが得意だと著者ハンス氏は言います。

誤報のイラスト

例えば・・・

私は記事の冒頭で、この書籍『ファクトフルネス』が50万部以上売れたと紹介しました。これもある意味、過大視本能に訴えています

そもそもビジネス書のジャンルで、他の書籍がどの程度売れているのか、ベストセラーと呼ばれるものはどのくらい売れているのか、比較をする必要がありますよね。

※一般的に2~10万部以上売れると「ベストセラー」と言われるようですが、明確な定義はないようです。

本屋のイラスト

「過大視本能」を抑えるためには

次の2点を注意してみることが書籍ではすすめられています。

  • 数字を比較する
    ひとつしかない数字は必ず疑ってかかる。年を変えたり、ジャンルを変えたり、他の数字はないかと聞いてみる。
  • 割り算をする
    分母は何かと考える。量のインパクトではなく割合で考える。国や地域を比較するときには「ひとりあたり」で考える。

そろばんのイラスト

3) 焦り本能

「焦り本能」は、今すぐにでも行動をしないと取り返しのつかないことになるのではないか? という思い込みから、逆に取り返しのつかないことをしてしまったり、普段ならばしない大胆な行動を起こしてしまう内容です。

著者のハンス氏は、この「焦り本能」を抑えるのが、一番やっかいだと言います。他の本能とも密接に結びついていることが多いからです。特に「恐怖本能」から「焦り」が生じた場合、多くの人が間違った行動をしてしまいます。命の危険を感じたときに、冷静な対処をできる人の方が少ないでしょう。

「本日限定、特別大セール」なんてセールス文句も「焦り本能」を刺激する常套手段ですね。

混乱する人のイラスト

「焦り本能」を抑えるためには

「焦り本能」に囚われそうになったら、まずを深呼吸をしたうえで、次のことを思い出したり、自問するようにしましょう。

今すぐに決めなければいけないことなどめったにない
・答えは二者択一ではない
データを確認する(見方は直線本能や、過大視本能で解説)
・未来は誰も知り得ることはできない。最高のシナリオと最悪のシナリオの両極端になることの方が稀
焦り本能は、時に大胆な行動を人にとらせる。その結果何が起きるか冷静に考えてみる

情報過多のイラスト

2.10の思い込み(本能)を全て紹介

フローチャートを書く写真

ここまでは、特に大事だと思う3つの本能について詳細を紹介していきましたが、改めて『ファクトフルネス』に上げられている10の思い込みを全て箇条書きにします。

今回の記事では、詳細を紹介しきれませんが、ご興味のある方はぜひ書籍を手にとってみてください。

《世界を勘違いさせる10の思い込み(本能)》

  1. 分断本能
    「世界は分断されているという思い込み」
    白人と黒人、西洋と東洋、格差社会など
  2. ネガティブ本能
    「世界はどんどん悪くなっているという思い込み」
    年間4,000万機の飛行機が無事故であることはニュースにならない
  3. 直線本能
    「世界の人口はひたすら増え続けるという思い込み」
    グラフを見かけたら「直線以外のグラフ」の一部ではないかと疑う
  4. 恐怖本能
    「危険でないことを、恐ろしいと考えてしまう思い込み」
    リスクは「危険度×頻度」で決まる。「恐ろしさ」はリスクに関係ない
  5. 過大視本能
    「目の前の数字がいちばん重要だという思い込み」
    大きい(小さい)と感じる数字は、比較したり割り算してみると本当の姿が見えてくる
  6. パターン化本能
    「ひとつの例がすべてに当てはまるという思い込み」
  7. 宿命本能
    「すべてはあらかじめ決まっているという思い込み」
    人も、国も、宗教も、文化も少しずつ変わっている。古い知識をアップデートしよう
  8. 単純化本能
    「世界はひとつの切り口で理解できるという思い込み」
  9. 犯人捜し本能
    「誰かを責めれば物事は解決するという思い込み」
    誰かが見せしめに責められていたら、それに気付こう。犯人ではなく原因を探さないと将来同じ間違いが起きる。多くの場合、社会を機能させている仕組みに注目するといい
  10. 焦り本能
    「いますぐ手を打たないと大変なことになるという思い込み」

3.まとめ「セミリタイア生活におけるファクトフルネス」

壁に背をあずけて座る写真

『ファクトフルネス』の考え方は世界の真実を知るツールになる。ただ、ここまで記事を読んでいただいた方でも、身近な具体例がないと漠然としてしまうかもしれませんね。

最後にまとめとして、私の身の回りの具体例を上げていきます。

 

セミリタイアとファクトフルネス

セミリタイアをする私にとって『ファクトフルネス』は、生活の質を変えるほどの衝撃がありました。そもそもこの書籍に出会っていなかったら、セミリタイア生活を諦めていた可能性もあります。

例えば投資においては、次のことに役立ちました。

・乱高下する株式市場の見方
・中長期投資のスタンスの形成

関連記事:実践的な中長期投資のはじめ方(わかりやすい3つのステップ)

また、ブラック企業に務めた経験から、社会に対して不信感を抱いていました。しかし「犯人捜し」をしても何も変わらないですね。ブラック企業の原因は社会の仕組みにあることは、頭ではわかっていましたが、『ファクトフルネス』を通してようやく冷静になれたと思います。
関連記事:東京でセミリタイア生活をはじめるまでのこと

ブラック企業のイメージ

メディアとファクトフルネス

時に痛ましい事件を報道するメディアの姿勢に対して、強い憤りを感じることもありました。書籍の中で、メディアは「ネガティブ本能」や「恐怖本能」を巧みに刺激してくると読んだ時に、ほれみたことかと思いました。

ところが著者のハンス氏は同時に「しかし、だからと言って、メディアが悪いわけではない」と言います。ドラマティックな事に、人は興味を抱きます。どんなに良心的な報道機関であっても、ドラマチックでない世界の姿を伝え続けるのは難しいだろうと。そんな報道は「正しくても退屈」すぎます。

ワイドショーのイラスト

無事に目的地にたどり着いた4,000万機の飛行機について、「今日も何事もなく着陸しました」とニュースにしても誰も興味を示しません。4,000万分の10程の事故のニュ―スが流れて「また少し怖い世の中になりましたね」とニュースキャスターが述べたときに、そんなことないと憤ることにも意味はありません。事故で亡くなった人の家族の悲しみが消えるわけでもありません。

加熱傾向にある一部のメディアや、フェイクニュースは社会問題ではありますが、ここにだって「分断本能」や「犯人捜し本能」を持ち込まずに、原因は何かと社会の仕組みを考えてみることが必要ですね。ニュースに心を痛めることがあったとしても、それで世界の全てを知ったわけではないと気付くかどうかは、私たちにかかっています。

持続可能な社会のイラスト

セミリタイア生活に限ったことではないかもしれませんが、『ファクトフルネス』は正しく自分や周囲を把握して、最良の判断をするためにとても役立つ考え方だと思います。

この記事が『ファクトフルネス』に興味を持って頂くきかっけになりましたら幸いです。

この記事のまとめ

・複雑・高度化した現代社会では、原始的な本能が正しい判断に役立つとは限らない
・世界を勘違いさせる10の思い込み(本能)を知ることで、必要のない恐れや焦りから解放されよう
・10の思い込み(本能)を刺激してくる人がいたら注意
世界を理解するのにニュースは役立たない。「正しくても退屈な報道」は誰も観ない

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